引越しトラブルは、誰しも避けたいものです。しかし実際のところ、引越し業者とのトラブルを皆無にすることは難しいといえます。なぜなら、人が関わる以上、引越しのプロであったとしても、何らかの形で不測の事態は発生するものだからです。
このような引越しトラブルを防ぐためには、どのようなことに気を付けたらよいのでしょうか。今回は引越しトラブルの回避術について取り上げながら、万が一トラブルが発生してしまった場合の対処方法に関しても、併せてご紹介していきます。
『標準引越運送約款』というと、難しく聞こえてしまいますが、難しく考える必要はありません。一言でいうと、『引越し取引のための基本ルール』が『標準引越運送約款』です。
引越し業者と利用者が契約を結ぶ際、事前に様々なルールを決めておきましょうといった内容となっています。トラブル回避のための規則といっても過言ではありません。
国土交通省が定めており、そのままの内容を利用している引越し業者と、国土交通省の許可を経て独自の『標準引越運送約款』を利用している引越し業者に分かれています。
見積もり依頼時に必ず提示する規則が設けられているため、引越し業者を利用した経験がある方であれば、一度は目にしたことがあるはずです。
ちなみに、『標準引越運送約款』が適用となるのは、あくまでも一般家庭の引越しでトラックを貸し切る場合に限られています。たとえば、事務所の移転など一部の特殊な引越しには適用されません。
尚、『標準引越運送約款』は、2015年7月までに改定案をまとめ、2016年1月より施行される予定でした。しかし、2016年9月現在、まだ施行されていない状況です。
『標準引越運送約款』は、頻繁に改定されるものではありませんが、見積もり依頼時は必ず目を通しておくようにしましょう。
ところで、『標準引越運送約款』は、難しい言葉で説明されていることから、一目ですぐに分かるような内容ではありません。本来、見積もり依頼時に営業担当者が詳しく説明することになっていますが、しっかりと説明している営業担当者は少ないものです。
そこで今回は、最低限抑えておきたい『標準引越運送約款』の内容例をピックアップして解説します。ぜひ参考にしてください。
見積りは無料です。そのため、手付金・内金など事前に支払う費用は一切ありません。ただし、下見の際に費用が発生した場合、その分は請求されます。
見積書は契約書でもあることから、サービス内容や料金などが変更となった場合、必ず修正する必要があります。万が一、引越し業者が変更手続きを怠った際は、見積書に記載された金額以外は支払わなくても問題ありません。
引越し業者は、見積もり内容に変更がないか必ず確認しなければなりません。引越しの2日前までに利用者に確認をせず、尚且つ見積もり内容が変更となった場合、変更後の見積もり内容は適用されないことになっています。
見積書には、以下でご紹介する事項を必ず記載しなければならない規則となっています。万が一、一部でも記載されていない事項がある場合、見積もり内容を無効とすることが可能です。
見積書の必須記載事項 |
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・事業許可番号 ・荷物の受取日時 ・荷物の引渡日時 ・運賃などの合計金額 ・支払い方法 ・見積り営業担当者の氏名 ・引越し業者名/電話番号 ・引越し業者問い合わせ電話番号 ・契約者氏名/住所/電話番号 ・新居での荷物を受取人指名/住所/電話番号 ・解約手数料の金額 ・依頼する引越し作業内容 |
先述したとおり、引越し料金の支払い方法は、必ず見積書に記載されています。クレジットカードなど、現金以外で支払いをしたい場合で、見積もり依頼時に詳しい説明がなかった場合は、見積書を確認しましょう。
尚、ほとんどの場合、引越し料金は作業完了後に支払うことになります。一部の引越し業者では、クレジットカードで支払うケースのみ、事前に何らかの手続きが必要です。見積もり依頼時に申し出ておかないと、現金支払いとなるため注意してください。
引っ越し費用を抑えるために、荷造りプランを利用しないケースがあります。その場合、引越し日当日までに荷造りを終えておかないと、当日作業員に手伝ってもらうことになるものです。
その場合、引越し業者は、荷造り作業分の料金を別途請求することが可能となっています。とはいえ、よほど多くの荷物が残っていない限り、追加料金が発生することはないようです。
引越し当日になって、『大型家具や家電』の搬出や搬入を、ベランダや窓から行う必要があると判断された場合、『クレーン車』もしくは『手吊り』での対応となります。その際、引越し業者は追加料金として請求することが可能です。
荷物がトラックに収まらない場合、急遽別のトラックを手配したり、もう1台追加でトラックを手配することになります。その際、引越し業者は追加料金を請求することが可能です。
2016年9月現在、解約手数料に関する取り決めは以下の通りとなっています。今後、『標準引越運送約款』が改定となった場合、変更される可能性があるため、キャンセルを希望する際は必ず事前に確認をしてください。
引越し日の2日以前:キャンセル料なし
引越し日の前日:運賃の10%以内
引越し日当日:運賃の20%以内
万が一、引越し日前に利用しているサービス(荷造り、エアコン取外し作業など)がある場合、キャンセル料と併せて利用したサービス料も請求されます。
引越し作業中、荷物が破損・紛失した場合、引越し完了日(新居へ荷物を搬入した日)から3ヶ月以内であれば引越し業者へ責任を問うことが可能です。1年以上経過すると、時効となるため賠償責任は消滅します。
ちなみに、実際のところ、引越し当日か翌日あたりまでに申し出ておかないと、引っ越し中に破損・紛失したわけではないと一蹴されるケースがほとんどです。
そのため、事前にデジカメなどで撮影し、荷造り前の荷物の状態を証拠として残しておきましょう。
また、家電製品は引越し後すぐに利用し、異常はないか確認してください。補足ですが、引っ越しで扱う荷物はそのほとんどが『中古品』です。補償対象となった場合、中古品は新品買い替えとなりません。
修理、代替品の提供、時価相当の弁償の順番で補償されます。
『標準引越運送約款』では、予め対応不可な荷物を指定しています。契約者から申し出たあった場合、引越し業者は引き受けることを拒否することが可能です。詳細は、以下の表をご覧ください。
依頼できない荷物 |
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・現金 ・有価証券 ・宝石貴金属 ・預金通帳 ・キャッシュカード ・印鑑 ・火薬類 ・灯油など発火の恐れのあるもの ・不潔な荷物 ・腐りやすい荷物 |
事前にオプションサービスを利用する必要があったり、自ら搬送する必要がある荷物は以下の通りです。
尚、事前に引越し業者へ申し出て運搬を依頼しておかないと、万が一、荷物破損・紛失が発生した場合、損害賠償を請求することはできません。
特殊な荷物 |
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・美術品 ・骨董品 ・動植物 ・ピアノ ・金庫など |
パソコンを含む精密機器、壊れやすい小物などの荷物に関しては、『標準引越運送約款』で運搬不可とはなっていません。ただし、引っ越し中に壊れてしまう可能性が高いため、依頼する際は補償内容を十分に確認してください。
また、パソコンは必ずデータバックアップを行う他、厳重な梱包を心掛けましょう。
エアコン着脱などのオプションサービスは、引越し業者と提携している業者が作業を行うことがほとんどです。提携業者との間で何らかのトラブルが発生した場合は、引越し業者が責任を負うことになっています。
床、手すり、階段、玄関、廊下などは、引っ越し作業中に破損しやすい箇所です。引越し作業完了後、または引越し当日中に確認し、傷、陥没、汚れなどを発見した場合は、速やかに引っ越し業者へ連絡をしましょう。
家屋の損傷は、損害賠償の対象となっています。
以下の事由でトラブルが発生した場合、引越し業者は責任を負わなくても良いことになっています。
責任の所在が引越し業者とはならない自由 |
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・顧客側の梱包不備によるトラブル ・引越し前から荷物が壊れていた ・自然災害、交通事故によるトラブル ・申告せずに特殊な荷物を運送したことによるトラブル ・引越し業者が運搬できない荷物を運送したことによるトラブル |
この項では、散見される引越しトラブルの事例を取り上げながら、その対処法について解説していきます。事前に把握しておくと、トラブルが発生した際も冷静に対処できるはずです。ぜひ参考にしてください。
キャンセルしたところ、見積もり金額の総額から2割ほどにあたる金額の請求があった。
引越し契約のキャンセルに関しては、『標準引越運送約款』で詳しく決められています。詳細は、以下の通りとなります。
・キャンセルのタイミング
引越し日の2日前:キャンセル料なし
引越し日の前日:引越し運賃の10%以内
引越し日当日:引越し運賃の20%以内
注目したい点は2つあります。『引越し日の2日前までにキャンセルすれば、キャンセル料はかからない』、『引越し運賃に対してキャンセル料が掛る』左記の2点です。
キャンセル料を請求された場合、まずは見積もり時に提示された『標準引越運送約款』の書面内容を確認しましょう。引越し業者によっては、独自で『標準引越運送約款』を設けていることがあるため、キャンセルに関する項目をチェックしてください。
その上で、『『引越し日の2日前までにキャンセルをすれば、キャンセル料は掛らない』ことになっており、尚且つ『引越し日の2日前までにキャンセルした』のであれば、キャンセル料を支払う必要はありません。
『引越し日前日』もしくは『引越し日当日』にキャンセルした場合であっても、『引っ越し費用の総額』ではなく、『引越し運賃の10%以内』、『引越し運賃の20%以内』のキャンセル料となっているか確認しましょう。
ちなみに、『運賃の10%、20%』を超えたキャンセル料が請求された場合、超えた分の費用については支払わなくても問題ありません。
見積書に記載されている引越し料金と、実際に請求された引越し料金が一致しない。
そもそも、見積書は『契約書』でもあります。万が一、見積書に記載されている引越し料金が変更となる場合、引越し業者は事前に契約者の許可を得た上で、『見積書の金額を変更する義務』があります。
つまり、何の説明もなく追加料金を請求された場合、『追加料金分は支払わなくても問題ない』ということです。ただし、例外があります。よくある事例としては以下の2つです。
・事前申告していた内容と、引越し当日の状況に相違点があった場合
たとえば、『エレベーターの有無』、『物件前の道幅や交通状況』、『物件の構造』、『荷物量の増加』、『申告していた以外の荷物の運搬』が該当します。
契約時に細部までしっかりと打ち合わせをしておけば、回避できる問題ばかりです。特に荷物量については、多少の変更は致し方がないものの、大幅な変更は当日の引越し作業に支障をきたすものとなります。
最悪の場合、ワンサイズ上のトラックを緊急手配したり、荷物を自分で運搬することになったりなど、追加料金発生の原因となるため注意しましょう。
・別途、なんらかの工事が必要となった場合
引越しトラブルの中でも、エアコン工事に関するトラブルは後を絶ちません。公式ホームページ上を確認し、引越し前に必ず下見をしてもらうようにしましょう。エアコン工事はオプションサービスとして提供されているケースがほとんどです。
サービス内容は様々で、エアコンの取外しと取り付けの料金が別扱いとなっていたり、正常にエアコンが使えるところまでチェックする場合は、別途料金が発生するケースなどがあります。
そのため、工事を必要とするサービスを受ける際は、作業内容とトータルで掛る費用を、しっかりとチェックしておきましょう。
見積もり・下見の際に、前金の請求があった。支払うべきなのか。
引越し業者が、見積もり・下見の際に手付金や内金を請求することは、『標準引越運送約款』で禁止されています。ただし、『引越し日より前に何らかのサービスを受ける場合』は、事前に請求しても問題はありません。
『引越し日より前に何らかのサービスを受ける場合』とは、たとえば引越し日前に荷造り作業を依頼する場合や、荷物量が多いことから2日や3日に分けて荷物を運搬する場合などが該当します。
引越し料金の支払い方は、『標準引越運送約款』に記載されています。引越し日より前に、一部の費用を支払うことになったとしても、『後払いにしたい』と事前に伝えておけば、悪徳業者ではない限り応じて貰えるはずです。
見積もり時に、無理矢理ダンボールを置いて行った。キャンセルしたところ送料を負担するように言われたが、支払う義務はあるのか。
国土交通省が定めている『標準引越運送約款』によると、『解約原因が契約者にある場合のみ、引越し業者は無料提供のダンボール・資材・サービス品の費用を請求して良い』ことになっています。
そのため、まずは『どの段階で契約成立となるのか』、見積もりに渡された『標準引越運送約款』の内容を確認しましょう。引越し業者によっては、『捺印やサインをしていなくても、契約の意思を見せた段階で契約したことになる』ケースがあります。
もしも『捺印やサインをしなければ契約とはならない』といった記載がある場合は、捺印やサインをしていない限り、ダンボール返却時の送料を支払う義務はありません。
また、契約をしたあとにキャンセルした場合であっても、手つかずの状態で返却すれば費用が発生しないことになっています。一部使用したとしても、『使用した分のみ支払えば良い』のです。
ただし『標準引越運送約款』の中に、『返却時の送料負担』を求める記載がある場合は、支払わなければなりません。
割引が適用されるということで契約をした。しかし、結果的に割引されていなかった。
『ホームページから予約すると○割引』、『契約時にネット回線契約も同時に申込むと、引越し料金が半額になる』など、引越し業者によって多様な割引サービスを提供しています。
まずは見積書の内容を確認し、割引されているかチェックしましょう。引越し業者ごとで対応は分かれるものの、割引特典を利用したい場合は、遅くともに契約前までに申し出る必要があります。
良心的な引越し業者であれば、必ずホームページ上に適用条件が記載されているものです。記載されていないときは、見積もり依頼の連絡を行った時点で、割引特典の利用意思を伝えておきましょう。
尚、割引特典の利用意思を伝えており、契約時も割引適応とのことで話が進んでいたにもかかわらず、割引されていなかった場合は、引越し業者へ相談することをお勧めします。
このようなトラブルを回避するためにも、見積書に割引した事実を記載して貰うようにしましょう。
作業員の態度が悪かったり、対応がひどかった。
作業員の態度に関しては、直接本人へ伝えるか現場責任者の作業員へ伝えましょう。直接伝えることが難しいようであれば、営業担当者、もしくは営業所へ直接連絡をする方法もあります。
詳細を伝えた上で、引っ越し作業を引き続き任せることが難しい場合は、作業員の交代や引越しの延期を申し出ることも可能です。
ただし、繁忙期などの忙しい時期は、作業員の交代・引越しの延期が難しいこともあります。このような事態を防ぐためには、事前に口コミ情報を確認すると共に、営業マンの対応や電話口の社員の対応もチェックしておきましょう。
評判が悪い引越し業者の場合、他の引越し業者と比較すると、悪い口コミの情報が断然目立ちます。引越し業者へ相談しても、最終的に解決へ至らない場合は、引越しトラブル専門の相談窓口へ連絡しましょう。
引越しトラブルに精通した弁護士が、1回のみ無料で対応してくれるケースもあります。代表的な引越し相談窓口は以下の3箇所です。
問い合わせ先 | 連絡先 | 営業時間 | 補足 |
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国土交通省 ホットライン |
電話:03-5253-4150 FAX:03-5253-4192 |
電話:平日10時~17時のみ メール・FAX:24時間365日対応 |
メール問い合わせ可能と案内があるものの、問合せ先アドレスは不明。国土交通省のホームページ上にあるお問い合わせフォームから問い合わせることも可能。 |
国民生活センター 通報/相談窓口・紛争解決 |
《消費者ホットライン》 電話:188 《つながらない場合》 平日バックアップ相談 電話:03-3446-1623 |
《消費者ホットライン》 平日:10時~12時、13時~16時 《消費者ホットライン・土日祝日の相談》 10時~16時 ※年末年始、国民生活センターの建物・施設点検日を除く 《平日バックアップ相談》 10時~12時、13時~16時 |
最寄りの消費者センター問合せ先は、国民生活センターの公式ホームページ上からも確認することができます。 また、土日祝日は休みとなっているものの、消費者ホットライン窓口であれば、10時から16時の間で相談可能です。 ただし、年末年始や国民生活センター指定休業日はお休みです。相談内容によっては、平日対応となることもあります。 一部の消費者センター以外、メール対応は不可です。また、事前連絡をしておけば、最寄りの消費者センターへ訪問相談することも可能です。 |
輸送サービス相談 全日本トラック協会 |
電話:03-5925-8981 | 平日:9時30分~12時 13時~17時 土日祝日は休み |
引越や宅配に関する専門相談窓口です。標準引越運送約款などに基づいて、アドバイスをしてもらうことができます。 ※引越し業者の斡旋は不可 |
予定されていた作業員人数が派遣されなかった。
見積書(契約書)で提示したサービス内容とは異なり、実際に提供されたサービスの質が劣悪だった場合、債務不履行扱いとなります。
そのため、予定されていた作業員人数が派遣されなかった際は、引越し業者は不足した作業員人数分を値引きしなければなりません。また、作業員が不足したことで生じた損害を弁償して貰うことも可能です。
作業員の服装が汚かった。
作業員の服装が汚かった場合、現場責任者に改善を申し出ることが可能です。改善がない場合、営業担当者や営業所へ連絡をして、改善を求めることもできます。ただし、単に服装が汚いだけで損害賠償を求めることはできません。
とはいえ、作業員の服装が汚いことで『荷物や屋内が汚れてしまった』など不測の事態が発生した場合は、弁償を含めた損害賠償を求めることができます。
事前に補足しておきますが、『標準引越運送約款』によると、引越し業者の事故責任は『荷物を新居へ搬入した日から3ヶ月以内』に契約者が申告をしないと消滅(時効)します。
引越し業者によっては、14日以内に申告しないと消滅となるケースもあるため注意しましょう。
ただし、引越し業者が住宅・荷物の破損や紛失を認めている場合は適用されません。また、事故証明の発行による時効は、『荷物を新居へ搬入した日から1年』です。
家財道具を壊された。
まずは、その場で作業員へ伝えましょう。話がまとまらない場合は、営業担当者や営業所へ当日中に連絡をします。対応がいい加減だったり、補償して貰えない様子であれば、先述した『消費者センター』などの専門窓口へ相談しましょう。
ちなみに、家財道具が破損した場合、新品交換とはなりません。なぜなら、引越しで扱う家財道具は『中古品』であることがほとんどだからです。そのため、補償の順番としては、『修理⇒代替品との交換⇒時価総額での弁償』となります。
また、すべての家財道具が補償対象となるわけではありません。特に高価な品物は、元々補償対象外となっていることがあります。見積もり時に渡された『標準引越運送約款』の内容を事前に確認しておきましょう。
大切な家財道具は、梱包する前に証拠として写真撮影しておくことをお勧めします。家財道具が破損した際、その写真を証拠として提出することが可能です。
屋内や共用部に傷がついた。
引越し作業中に、屋内や共用部に傷が付いた場合、保険で補償して貰うことが可能です。ただし、引っ越し作業中についた傷であることを、証拠として示さなければなりません。
傷の状態が分かるように、撮影日時記載の上で写真撮影をしておくことはもちろんのこと、不動産管理会社の担当者と一緒に、室内や建物内の傷の状態を事前にしっかりとチェックしておきましょう。
荷物が紛失した。
引越しトラブルの中でも、紛失関連は証拠を立証することが難しい案件です。そのため、紛失した場合の補償について、しっかりと事前に確認をしておきましょう。また、重要な荷物は、必ず自分で管理することも重要となります。
信頼できる引越し業者へ依頼すれば、よほどのことがない限り荷物が紛失することはありません。ただし、『混載便』、『荷物の積み替え』がある引越しは、荷物紛失が発生しやすい傾向にあります。
『混載便』、『荷物の積み替え』など、荷物をコンテナやトラックに積み込んだあと、輸送中の段階で『人出によって荷物を動かす必要のある引越しプラン』を利用する場合は、荷物紛失時の対応・補償内容を入念に確認しておきましょう。
見積書の内容と、実際の作業内容に相違があった。
まずは現場責任者に説明をしてもらう必要があります。よくあるケースとしては、営業担当者と現場担当者との疎通が取れておらず、適切なサービスを受けることができなかったことが挙げられます。
見積書の内容に記載されているサービスを受けることができなかった場合は、その分のサービス料を割引して貰うことが可能です。
引越し業者が時間になっても来なかった。
大幅に遅延して引越しに支障をきたした場合、契約違反となります。その場合は、引越し金額を減額してもらうことが可能です。
引越し先までトラックに乗せて貰うことができなかった。
引越し業者が加入している保険は、家財道具のみ対象としています。人に対する補償がないため、引越先までトラックに乗せてもらうことはできません。
ただし、『赤帽』など一部の小規模な地域密着型の引越し業者では、トラックへの同乗が可能なこともあります。とはいえ、引越し業者側が同乗を許可した場合であっても、事故が発生した際に補償して貰えるかどうかは、保険会社の判断となります。
そのため、引越し業者の言い分だけを鵜呑みにはせず、保険会社へも確認しておきましょう。
最後に、引越しトラブルを防ぐためのポイントについて取り上げていきます。特に重要となる3つをご紹介しますので、参考にしてください。
引越し業者は引越しのプロです。しかし、だからといってすべてお任せしてしまうのは考えものだといえます。
今回ご紹介した引越しトラブルは、他人事ではありません。トラブルは誰しも避けたいものですが、万が一発生してしまった際は、適切な方法で早めに対処する必要があるものです。
そのため、見積もり依頼時だけではなく、引越しサービスを利用する上で、納得できないことや不明点がある場合は、早めに相談をしておきましょう。
この段階でいい加減な対応をする引越し業者は、価格の安さやサービスの内容に魅力を感じたとしても、利用しないことをお勧めします。
見積書は契約書としての役割も果たしています。そのため、見積書の内容はしっかりと確認しておきましょう。その上で、記載漏れがある場合は、手間が掛ったとしても必ず修正してもらうことをお勧めします。
地域密着型の引越し業者や、訪問見積もり不要の単身引越しの場合、そもそも見積書がなく口頭での口約束のみというケースもあるようです。
引越しトラブルの多くは、連絡ミスによる行き違いによって発生するため、見積書は必ず用意して貰いましょう。
そして、重要事項があれば、見積書の空きスペースに詳細内容を記載して貰い、証拠として残しておきたいものです。
訪問見積もりの際、その場で契約を迫ってくケースがあります。『今日契約をすれば、この価格で契約できます!』といった謳い文句で契約を迫ってきますが、決して署名や捺印をしてはいけません。
また、独自で『標準引越運送約款』を設けている引越し業者の場合、『署名や捺印をしていなくても、契約する意思を示した時点で契約したと判断される』ケースもあります。
そのため、契約する意思がない場合は、必ずその日は返事をせずに引き取ってもらいましょう。
『契約しない場合は、あとから返却できる』といって、無理矢理ダンボールを置いていくケースも珍しくありませんが、正式な契約を交わすまでは、いかなるサービスも受けてはいけません。
引越しに関連するトラブルは、毎年消費者センターへ数多く寄せられています。事前に防ぐことができたケースもありますが、不慮の事故で思わぬ痛手を被ることもあるものです。
また、引越し業者だけに限らず、引越しトラブルは敷金などあらゆるケースが想定されます。とはいえ、どのような案件でも共通している予防法は、事前のリサーチと相談・確認を怠らないということです。
今回ご紹介した情報を基に、できるだけ引越しトラブルが発生しないよう予防してみてはいかがでしょうか。その上で、万が一トラブルが発生した場合、焦らず冷静に対応することがポイントとなります。