賃貸アパートやマンションから退去する際、費用はどのくらいかかるのでしょうか。入居時に敷金を払っているならば、返還される敷金の金額や修理費用も気になるところです。
また万が一、高額な修理費用を請求された際、どのように対処すれば良いのでしょうか。賃貸で引越しをする際の費用を抑え、気持ち良く退去するために、最低限抑えておきたいポイントを詳しくご紹介していきます。
賃貸のアパートやマンションを退去する際の手続きは、非常に簡単でシンプルです。順を追って解説していきます。
最初に行うのは、『解約予告』です。大家さん、もしくは不動産管理会社に退去する旨を伝えます。引越しが決まった時点で、すぐに連絡をしましょう。正式な退去日が決まっていなくても、気にすることはありません。
なぜなら、賃貸の契約は『月末』で統一されていることがほとんどだからです。つまり、大家さんや不動産管理会社としては『退去月の末日までに退去してくれれば良い』という認識となります。
ただし、賃貸借契約書の内容によっては、『1日から15日までに退去を申告した場合、半月分の家賃しかかからない』ケースがあるようです。そのため、賃貸借契約書の内容を確認の上、解約予告は1日でも早く行うことをお勧めします。
尚、毎月の家賃の支払いが口座振替である場合は、口座振替停止の申し出をしておきましょう。多くの銀行では、振替前日もしくは1週間程度前までに停止手続きが必要となります。
銀行の窓口で手続きを行いますが、通帳や届け出印、身分証明証など、銀行ごとで必要となる書類や持ち物に若干違いがあるようです。事前にホームページ上を確認するか、問い合わせて確認をしておきましょう。
賃貸で部屋を出る時にかかる費用は、一体どのくらいなのでしょうか。結論からいいますと、ケースバイケースであるため、だいたい何万円といった具合に提示することができません。
なぜなら、各物件によって、建設する際に使用する部材の質・種類は異なりますし、入居時の部屋の使い方次第で修繕費は異なってくるからです。
ちなみに、悪質な不動産会社や大家さんではない限り、定期的に掃除をしていれば、莫大な退去費用がかかることはないといえます。
詳細は賃貸借契約書の中に記されており、国土交通省が定めている『原状回復のガイドライン』を基に決められています。たとえば、1Rから1K程度の間取りであれば、15,000円から2万円程度。
2LDKから3LDK程度の間取りであれば、3万円から4万円程度が相場となりそうです。これは、ネット上で散見された口コミ情報をもとに出した金額ですが、同じ間取りでも退去費用は全く違うことが分かりました。
つまり、建物の構造、使用している部材、部屋の汚れ具合、不動産管理会社や大家さんとの契約内容、部屋の広さ、室内の設備、入居年数によって、退去費用は全く異なるということです。
尚、一般的に『修繕費』や『ハウスクリーニング料』のことを退去費用と呼んでいます。賃貸契約は『2年契約』であることがほとんどですが、2年以内に退去する場合は『修繕費』や『ハウスクリーニング料』が高めに設定されているものです。
一方、長く住むほど『修繕費』や『ハウスクリーニング料』は安くなっていきます。なぜなら、『経年劣化による自然な汚れ・傷』として判断されるからです。
冒頭でもお伝えしたとおり、退去費用の相場を出すことは困難ではあります。とはいえ、目安となる金額が分かれば、『高額な退去費用を請求されたらどうしよう』などと不安を感じる必要はなくなるものです。
そこで、ネット上で出回っていた『3つのケース』をまとめましたので、参考にしてください。
退去費用:9万円程度
入居年数:5年程度
カーペットの損傷が酷かったため、5年住んでいたにもかかわらず退去費用が高くついたようです。
退去費用:17万円前後
入居年数:5年程度
タバコのヤニが酷かったため、8畳1部屋分のクロスの貼り替えがあり追加請求があったとのことです。
退去費用:8万円程度
入居年数:約半年
契約満了前に退去したため、敷金の返還はありませんでした。しかし、部屋の中を綺麗にしていたことから、高額な退去費用はかからなかったようです。
賃貸で出るときにかかる費用が分かったところで、次は敷金返還相場について見ていくことにしましょう。
敷金の返還相場は、大まかにいうと居住年数、ハウスクリーニング料、修繕費によって変わるものです。
また当然のことながら、賃貸借契約の内容によっても異なってきます。計算式で表すと、以下の通りとなります。
尚、あくまでも一般的な見解ですが、10年以上居住した場合、敷金は8割から9割程度返還されるケースが多いようです。
逆にほとんど敷金が返還されないケースは、『新築物件』、『著しく部屋の中が汚い場合』が該当します。
状況によっては敷金が返還されないどころか、別途費用が請求されるケースも珍しくありません。
以上の理由から、だいたいどの程度といった相場を提示することは難しいのですが、5つの事例をご紹介することにします。是非、参考にしてください。
家賃:5万円程度 敷金:10万円程度 敷金返還額:0万円
居住年数:2年 追加請求:2.6万円程度
床の傷の補修、クロスの貼り替え、エアコン清掃があったため、敷金の返還は無く追加で費用が請求されました。
家賃:6万円程度 敷金:13万円程度 敷金返還額:9万円程度
居住年数:10年6ヶ月
全額返還とはならなかったものの、7割ほどの敷金が返還されました。室内の状況によっては、もう少し交渉することで多くの敷金が返還されたかもしれません。
家賃:9万円程度 敷金:27万円程度 敷金返還額:20万円程度
居住年数:5年ちょっと
ケース3の場合、元々10万円程度の追加請求がありました。しかし、『敷金診断士』へ査定依頼をしたところ、最終的には20万円ほどの敷金が返還されたとのことです。
家賃:12万円程度 敷金:12万円程度 敷金返還額:4万円
居住年数:2年
部屋を綺麗に使っていたにもかかわらず、4万円しか返還されなかったようです。交渉次第ではもう少々返還して貰うことが出来たと思われます。
家賃:7万円程度 敷金:14万円程度 敷金返還額:全額
居住年数:11年ちょっと
退去を申し出た際は、敷金が返還されない可能性があることを示唆されたようです。しかし、後に不動産管理会社へ交渉したところ、全額返還となりました。
日頃から部屋を掃除して綺麗にしておくことや、退去時に適切な掃除をすることは、敷金返還に大きな影響を与えるといっても過言ではありません。そこでこの項では、適切な掃除の方法についてご紹介していきます。
掃除方法に関する情報は、ネット上などから簡単に探すことが可能です。その中でも、敷金返還と関連性のある掃除箇所を3つ取り上げていくことにしましょう。以下にまとめましたので、参考にしてください。
明らかな手入れ不足と見られる結露・カビ・シミ・サビは、経年劣化として判断して貰うことができません。そのため、結露・カビ・シミ・サビは日頃から取り除いておきましょう。
ある程度汚くなってから除去しようと思っても、そう簡単には綺麗になりません。引越しの準備と荷造りに追われている中で、清掃に時間を掛けることは誰しも避けたいところです。
最近は様々な洗剤が多数販売されていますので、それらの洗剤を使用したり、重層やお酢など自宅にあるものを活用して綺麗に汚れを落としましょう。
経年劣化による多少の傷や色落ちは見逃して貰えるものです。しかし、明らかな過失と取られるような傷や色落ちは弁償しなければなりません。
賃貸の退去時の費用をできるだけ抑えたい場合は、ホームセンターなどで販売されている傷の修正グッズ、床クリーナー、床ワックス、コーティング剤を活用してみましょう。
丁寧に掃除やワックスがけをすれば、それなりに見栄えを良くすることができます。
キッチン周りの掃除を疎かにしていると、ススや油汚れがなかなか落ちずに困ることがあります。特にガスコンロ、換気扇、ガスコンロ周辺の壁は、頑固な汚れでギトギトになっていることがあるため、入念に掃除をしましょう。
どうしても落とすことができない汚れは仕方がありませんが、見るからに手抜き掃除だと分かるような状態の場合、ハウスクリーニング料や修繕費として大幅に差し引かれる可能性があります。
賃貸の退去時の決まりごとの中に、『退去する際は入居前と同じ状態に戻してから部屋を返す』というルールがあります。この『入居前と同じ状態に戻す』という点が、ちょっとした曲者なのです。
一般的な認識としては、『賃貸で部屋を退去するときに、掃除をしておけば問題ないんでしょ?』といった解釈となりますが、決してそうではありません。
『入居前と同じ状態に戻す』こと。すなわち『原状回復』は、部屋を貸した側と借りた側のどちらが負担するのか、厳密に決められているのです。
『原状回復』にまつわるガイドラインは国土交通省が定めており、正式名称は『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』といいます。
賃貸の退去にまつわるトラブルは後を絶ちませんが、『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』の内容さえ正しく理解しておけば、賃貸の退去費用の相場のことで悩む必要はなくなります。
なぜなら、退去費用の予測がつくようになりますし、ある程度のトラブルを未然に防ぐことができるようになるからです。ちなみに、特に大切な箇所を以下の表にまとめました。参考にしてください。
鍵 | 貸主負担 | 紛失や破損がない限り、貸主が負担。 |
---|---|---|
借主負担 | 契約書に『退去時負担』と記載がない限り借主負担はなし。 | |
設備・エアコン 浴室・トイレなど |
貸主負担 | 経年劣化による故障や自然故障は貸主負担。 |
借主負担 | 掃除や手入れ不足による故障は借主負担。 | |
水回り | 貸主負担 | 手入れが行き届いていれば、貸主負担。 |
借主負担 | 新たにできたカビ、水垢は借主負担。 | |
壁・壁紙・クロス | 貸主負担 | 自然消耗、画びょうやピンの穴、冷蔵庫焼けは貸主負担。 ただし、冷蔵庫焼けは程度による。 |
借主負担 | 煙草のヤニ、汚れ、釘穴、ネジ穴、台所の油汚れは借主負担。 | |
床・フローリング | 貸主負担 | 多少の傷は貸主負担。 |
借主負担 | 大きな傷は借主負担。 | |
畳 | 貸主負担 | 大きな汚れはないものの交換を要する場合は貸主負担。 |
借主負担 | 汚した部分だけ借主負担。 |
借主の負担割合は、『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』で詳しく解説されています。たとえば、壁紙やクロスの耐用年数は6年と決まっていますが、6年住んでから退去する場合、負担費用が掛かることはありません。
一方、6年が経過する前に退去すると、経年劣化分を引いた費用が請求されます。ちなみに、壁紙やクロスは1平米あたり1,000円前後が相場です。
経年劣化による正しい費用の算出方法は、『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』にて確認してください。
賃貸で退去する際にかかる費用の相場を把握しておけば、請求された退去費用が高額かどうか分かるようになります。万が一、相場よりも高額な退去費用となった場合、どのように対処すべきなのでしょうか。
最低限抑えておきたい、3つの対処法をご紹介していきます。
まず最初に行いたいことは、不動産管理会社や大家さんに直接掛け合うことです。それでも応じて貰えない場合は、内容証明を送付しましょう。
ネットで検索をすると、敷金回収用の内容証明無料テンプレートを複数見つけることができます。
敷金回収時に記載しなければならない事項は、全部で14項目あるため、書き漏れのないようにしましょう。
①大家さんの氏名・住所
②自分の名前・住所
③賃貸借契約締結日
④契約していた部屋の住所都部屋番号
⑤入居した日(実際に住み始めた日時)
⑥支払っている敷金の金額
⑦契約終了を申告承諾された日付
⑧契約終了日
⑨退去日(部屋を明け渡した日)
⑩敷金返還額の見積もり作成日
⑪敷金返金額の見積書に記載されている金額
⑫国土交通省ガイドラインによると借主負担ではないことを明記
⑬請求金額
⑭支払い口座
敷金返還代行業者として有名なのは、『敷金返還ホットラインセンター』、『敷金返還請求net』、『敷金ポリス』の3つです。
敷金鑑定士や敷金診断士が、『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』を元に費用を計算して、変わりに交渉してくれます。引越し業者によっては、オプションサービスとして提供していることもあるため、利用を検討してみるのも一考です。
着手金、成功報酬、実費など、依頼する業者によって利用料金は異なりますが、相談は無料となっています。そのため、まずは相談をして、高額請求に該当するのか確認してから依頼を検討しましょう。
尚、成功報酬型の場合、最終的に支払う報酬金額は、減額できた金額の15%~30%程度です。減額に失敗したり、交渉に失敗した場合は着手金しかかかりません。
少額訴訟は、60万円以下の金銭トラブルで利用されている訴訟手段の1つです。賃貸で退去する部屋の家賃が60万円以下であれば、利用を検討してはいかがでしょうか。簡易裁判ですので、1回の審理で結審します。
手数料は数千円しかかからず、書類の書き方は簡易裁判所にいる担当官が教えてくれるため安心です。必ず訴訟に勝てるわけではありませんが、最終手段として考えておきましょう。