引越しの際、貴重品をそのまま引越し業者へ任せている方が多いようです。バレなければそのまま運搬されますが、本来は自ら管理しなければならない荷物の1つとなっています。
そこで今回は、引越し時の貴重品の荷造りや管理方法について、詳しく取り上げていくことにしましょう。また、貴重品の扱い方、補償対象の範囲、自分で貴重品を運搬できない場合の対処方法などにも触れますので、ぜひ参考にしてください。
引越し当日に、貴重品の荷造り・管理をするにはどうしたら良いのでしょうか。詳しく解説する前に、1つ抑えておきたいことがあります。そもそも引越し業者は、家具や家電、衣類、小物、雑貨などを運搬する専門の業者です。
貴重品の荷造りや管理、運搬は基本的に扱っていません。最近は、パソコンも貴重品として扱われることがあるため、契約時に必ず『どの荷物が貴重品にあたるのか』確認しておく必要があるのです。
また、家財道具に貴重品を上手く隠して、運搬して貰おうと考えることは控えましょう。万が一紛失しても、補償してもらうことができないからです。
現金や通帳を本・衣類に挟む他、机やタンスの引き出しの中に隠す人がいるようですが、そのような荷造りや管理方法は紛失に繋がりやすいためお勧めできません。
では、引っ越しで貴重品を荷造り・管理するためにはどうすれば良いのでしょうか。まず荷造りについては、荷物の内容によって話が異なってきます。代表的な例を以下にまとめましたので、参考にしてください。
封筒などにまとめて入れ、引っ越し当日はバッグの中で保管します。不安な方は、信頼できる身内に預ける方法も一考です。
金、銀などの宝石関連については、バッグの中に入れて保管することが難しいものです。信頼できる身内に預けるか、専門の業者へ管理依頼した方が安心できます。荷造りといっても、特別難しいことはありません。
小さめのダンボールに入れて、いつも目の届くところに置き、いつでも持ち運びできるようにしておくことをお勧めします。
美術品や骨董品は、品質や大きさによって対応が異なります。とはいえ、大切な美術品や骨董品は、とても自分で梱包できるようなものではありません。引越し業者によって、条件付きで美術品や骨董品の荷造り・管理を扱っているケースはあるものです。
ただし、補償の上限が設けられているため、手放しで安心して任せることができるとはいえません。
ちなみに、サイズが小さめの貴重品は『貸金庫』や『貴重品を扱っているトランクルーム』に預けることも可能です。『貸金庫』、『貴重品を扱っているトランクルーム』の概要を以下にまとめましたので、参考にしてください。
例)三井住友銀行の場合
荷物の種類 | 預けることができる荷物内容 |
---|---|
重要書類 | 預金通帳・預金証書 契約証書・権利証 有価証券・遺言書 保険証書 等 |
貴重品類 | 金 骨董品 宝飾品 等 |
思い出の品 | 家族のアルバム 思い出の手紙 過去の日記 等 |
変形、変質する恐れがある荷物、危険物は預けることができません。また、格納庫はサイズが決まっています。サイズオーバーの場合は、利用不可となるため注意しましょう。
7,000立方cm未満:高さ5.9cm / 間口26.0cm / 奥行45.0cm 6ヶ月で8100円
※その他のサイズ、料金は『三井住友銀行 貸金庫』のWEBサイトを確認してください。
支払いは、毎年4月、10月に半年分の料金を前払いします。新規の場合、利用開始日の翌月初以降最初にやってくる『3月か9月の末日までの料金』を月割で支払って下さい。
一般的なトランクルームサービスは、貴重品を保管できないことになっています。しかし、中には貸金庫サービスに似たトランクルームサービスも存在するようです。たとえば、『三井倉庫グループ』、『共進倉庫』が該当します。
『三井倉庫グループ』のWEBサイトを確認したところ、サービス料金を含む詳細について案内されていませんでした。そのため、以下で『共進倉庫』の概要をご紹介します。表にまとめましたので、参考にしてください。
例)共進倉庫の場合
概要 | 詳細について |
---|---|
美術品・貴重品を 預けることが可能 |
公式Webサイト上で、案内されていませんでした。 ちなみに、危険物、臭いがする品物、生物、法律に触れる品物、発火の恐れがある品物は不可です。 |
格納庫サイトと料金 | 幅58cm×奥行70cm×高さ83cm 6,000円(毎月かかるのかは不明。要問合せ。) ※格納庫のサイズ、料金は他にも多数あり。 詳細は、Webページより要確認。 |
利用期間と支払い | 1日からでも預り可能。費用については、事前問合わせが必須 |
すでに前項でも触れていますが、結論からいいますと、引っ越し業者に貴重品の運搬をお願いすることはできません。国土交通省が定めている『標準引越運送約款』で禁止されているからです。
『標準引越運送約款』とは、引越し業者と契約者との間で交わされる、約束事のような内容となっています。事前に約束事を決めておき、万が一のトラブルに備えているのです。
より専門的な話になりますが、貴重品の扱いについては『標準引越運送約款第4条』で登場します。引越し業者は、『貴重品の運送を拒否できる』ことになっているのです。ようするに、貴重品は自分で運ばなければならない荷物だといっても過言ではありません。
無理矢理たのむことができたとしても、一切の補償が付いていないため、紛失や破損事故が発生しても自己責任となります。ただし、一部の引越し業者では、オプションサービスとして一部の貴重品の運搬を扱っていることがあるものです。
サービスの詳細はもちろんのこと、どこまでの補償となっているのか併せて確認をしておきましょう。
この項では、貴重品の種類と保管方法について解説していきます。引越し貴重品リストとして、以下の表にまとめました。
荷物の種類 | 荷物の内容 | 荷物の保管方法 |
---|---|---|
現金・金融商品など | ・現金 ・印鑑 ・通帳 ・キャッシュカード ・クレジットカード ・小切手 ・株等の有価証券 ・債権証書 ・パスポート ・カギ類 ・貴金属 ・宝飾品 |
基本的にはバッグの中に入れて持ち歩くか、信頼できる家族に預けるのがベストです。 もしくは銀行の貸金庫や、貴重品専門のトランクルームに預けることもできます。 費用は比較的安価で、契約する格納庫のサイズや内容によって決まるものです。 利用開始までに日数を要することがあるため、早めに申込みをしておきましょう。 |
思い出の品物 | ・写真 ・形見 ・アルバム ・思い出の品物 |
段ボールに入れて、自家用車で運搬する方法。 もしくは、トランクルームを利用する方法があります。 |
データ関連 | ・パソコンのデータ ・パソコンのハードディスクデータ ・勤務先で扱っている資料など |
パソコンのデータ関連は、補償の対象になっていません。 パックアップデータは、クラウドサービスを利用して保存しておくか、USB、ハードディスクなどに保存しましょう。 USBやハードディスクは、大きな荷物ではありません。 そのため、小さな段ボールなどに入れて自ら保管することをお勧めします。 |
美術品関連 | ・骨董品 ・絵画 |
万が一に備え、専門の業者へ依頼した方が安心です。 引越し業者によっては、引越し期間中のみ保管してくれることもあります。 見積もり時に相談をしておきましょう。 |
引越し中に荷物が無くなってしまった場合、どのような対応となるのでしょうか。最終的には、『引っ越し業者の補償範囲』によって対応が分かれることになります。
一般的な家財道具であったとしても、引越し業者が荷物の紛失を補償していない場合は、泣き寝入りするしかありません。荷物の紛失は、『紛失した事実を証明することが難しい』トラブルなのです。
また、引越しで貴重品を紛失した場合、前項でも取り上げてきたとおり、引っ越し業者は補償することができない決まりとなっています。そのため、対応としては警察に『遺失届』を提出するのが一般的です。
貴重品紛失時、最低限抑えておきたい手続き方法を以下にまとめました。特に重要となるパターンを取り挙げましたので、参考にしてください。
クレジットカード、キャッシュカード、通帳に関しては、直ちに停止して貰いましょう。問い合わせ先は、公式ホームページ上などから確認することが可能です。心配であれば、事前にメモなどに残しておくことをお勧めします。
賃貸住宅の鍵や車の鍵を紛失した場合、すぐに交換することをお勧めします。また、賃貸住宅は不動産管理会社、車は購入先、もしくはディーラーへ連絡をしておくとより安心です。
金融機関へ連絡をし、紛失したことを伝えましょう。その上で紛失届を提出します。もちろん、警察へ遺失届を提出することも忘れないようにしましょう。小切手や手形は、『振り出し証明書』を発行し、簡易裁判所で『再発行手続き』を行う必要があります。
荷物紛失トラブルを最小限に抑えるためには、『引越し業者の作業員の前で荷物点検をすること』、『写真撮影をして証拠を残しておくこと』がポイントとなります。その上で、新居へ移動した後、すぐに荷物の確認を行いましょう。
引っ越し業者は、必ず『運送業者貨物賠償責任保険』に加入しています。通常、補償額の上限は1,000万円となっていますが、引っ越し業者によって対応が異なるため、見積もり依頼時に確認が必要です。
ところで、引っ越し業者の保険で賠償の対象となるのは、どのようなケースなのでしょうか。大きく分けると2つのケースがあります。参考にしてください。
『作業員による荷造り・荷解き中』、『積み込み作業中』、『荷降ろし作業中』、『荷物の輸送中』、『荷物の一時保管中』、偶発的に事故が起こった場合は補償してもらうことができます。
引越しを依頼した契約者(顧客)が訴訟・仲裁・調停を起こした場合、掛った費用を補償して貰うことができます。
『運送業者貨物賠償責任保険』の内容は、見積もり時に必ず営業担当者が説明をするものです。不明点がある際は、事前に確認をしておきましょう。
次に、引越業者の保険が適用されないケースをみていくことにします。以下にまとめましたので、参考にしてください。
これまで解説してきたとおり、現金、通帳、キャッシュカード、印鑑などの貴重品は、補償対象外となります。
荷物の梱包が不十分だった場合や、引っ越し前から破損や品質不良があった場合は、補償対象外となります。他にも、引越し契約者(顧客)が故意で荷物を破損させたり、事故を起こした場合も補償対象外です。
輸送中にトラックが追突され荷物が破損した際は、補償対象となりません。尚、事故の原因が引越し業者側にある場合は、保険会社ではなく引越し業者が賠償することになります。
詳細は『標準引越運送約款』に記載されているため、見積もり依頼時に必ずチェックしましょう。
天災、火災、爆発、戦争、軍事活動、ストライキなどによって、荷物が破損してしまった場合、補償の対象となりません。
荷物が自然消耗したり、欠損、荷物の性質により損害が発生した場合、補償対象とはなりません。たとえば、食べ物が腐ったり、荷物の変色、サビ・ムレなどで損傷した場合などが該当します。
賠償に上限が設けられている荷物は、保険会社ごとで若干異なります。ただし、共通していえるのは、『骨董品』、『美術品』は補償対象外となっているか、もしくは補償されていても上限が設けられているということです。
たとえば、『東京海上日動』、『損保ジャパン日本興亜』が提供している『運送業者貨物賠償責任保険』の場合、上限が設けられている家財道具は以下のとおりです。表にまとめましたので、参考にしてください。
荷物の内容 | 保険金の上限金額 |
---|---|
貨紙幣、有価証券 (金、銀、白金などの地金を含む) |
1梱包につき、10万円が上限 |
貴金属、宝玉、宝石、宝飾品(時計・アクセサリー類など)、骨董品、彫刻品、書画などの美術品 |
1個、もしくは1組あたり10万円が上限 |
事前に補足しますが、『損保ジャパン日本興亜』の場合、保険商品の種類によって賠償の上限が異なります。保険商品は、大きく分けると2種類です。以下の図にまとめましたので、まずはこちらをご覧ください。
《基本条件別補償範囲の一覧》
事故内容 | A方式(限定型) | B方式(ワイド型) |
---|---|---|
火災、爆発 |
〇 |
〇 |
トラックなどの輸送用具の衝突、転覆、墜落 |
〇 |
〇 |
トラックなどの輸送用具が他の輸送用具に搭乗中の沈没、座礁、座州、衝突、転覆、脱線、墜落、不時着 |
〇 |
〇 |
盗難、各荷造りごとの紛失 |
〇 |
〇 |
擦損、かぎ損 |
× |
〇 |
雨・雪等のぬれ、汗ぬれ |
× |
〇 |
虫食い・ねずみ食い |
× |
〇 |
破損、まがり、へこみ |
× |
〇 |
ご覧いただいたとおり、保険商品によって補償範囲が異なることが分かります。
この情報を踏まえた上で、賠償に上限が設けられている荷物は以下の表の通りです。こちらも併せて参考にしてください。
荷物の内容 | 保険金の上限金額とプラン別の補償範囲 | |
---|---|---|
A方式(限定型) | B方式(ワイド型) | |
青果物、生鮮食品、食物 (生花、植木など) |
基本条件と同範囲で保険金が支払われます。 上限金額に関する案内はなかったため、事前に確認してください。 |
A方式の補償範囲と併せて、輸送用具への積込み中、もしくは同輸送用具からの荷降ろし中に生じた破損、曲損、へこみ損による損害限定で補償されます。 上限金額の案内はなかったため、事前に確認してください。 |
美術品、書画、骨董品、貴金属、宝玉石 |
A方式(限定型)、B方式(ワイド型)の基本条件にしたがって、保険金が支払われます。 ただし、1梱包(外装)あたり10万円が上限です。 |
|
生動物 |
火災、爆発、輸送用具の衝突、転覆などが原因で死亡した場合、保険金が支払われます。 上限金額の案内はなかったため、事前に確認してください。 |
引越し業者へ任せるのではなく、自ら貴重品や高額品を運搬する場合、最低限抑えておきたい3つの注意点があります。以下にまとめましたので、参考にしてください。
貴重品や高額品は、新居へ運び込んだ後すぐに分かるように目印を付けておきましょう。また、引越し業者が搬入した荷物と混ざることを避けるためにも、色がついたテープなどを貼って、宅内の1箇所にまとめておくことをお勧めします。
『引越荷物運送保険』は、引越し業者だけに限らず、顧客側でも加入することができる保険商品です。加入する必要性を感じない人が目立ちますが、何か起こってからでは手遅れとなります。運搬する荷物内容に合わせて、保険への加入を検討しましょう。
仏壇の引き出しや、押し入れの奥、タンスの引き出しなど、思わぬところに貴重品や高価な荷物がしまわれていることがあります。そのため、貴重品や高額品が隠れていないか、必ず家具や室内の隅々まで調べるようにしましょう。
忘れた状態で引越し作業を行った結果、荷物の紛失や破損が発生したとしても、引越業者へ責任を問うことはできません。
金庫やピアノのように重量があったり、絵画などの美術品や壺などのサイズが大きな骨董品がある場合は、どうしても自分で運搬することができないものです。このようなときは、どうすれば良いのでしょうか。
方法は大きく分けると2つあります。それぞれ以下にまとめましたので、参考にしてください。
引越し業者では、様々なオプションサービスを提供しています。特に大手の引越し業者は、オプションサービスの種類が豊富です。自分で運搬することができないと判断した際は、早めに営業担当者へ相談をしましょう。
たとえばピアノの場合、引越し業者のオプションサービスだけに限らず、専門の輸送業者へ自ら依頼することができるものです。ネットで検索をしてみると、複数の業者を見つけることができます。
繁忙期は予約が殺到している可能性があるため、利用を検討する際は早めに予約をしておきましょう。3社から4社ほどから見積もりを取り、サービスの質と費用のバランスを比較しながら、最適な業者を選択したいものです。