長距離引越しの料金は、短距離引越しと比較すると高くなりがちです。そのため、混載便を利用して費用を節約するケースがあります。とはいえ、混載便にすると、本当にお得になるのでしょうか。
また、混載便には、何かデメリットは存在するのでしょうか。今回は、引っ越し費用節約時に利用されるチャーター便と比較しながら、詳しく解説していくことにします。
引越しの際に混載便を利用するのか、チャーター便を利用するのか検討する前に、それぞれの概要について把握しておく必要があります。そもそも、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
まず混載便ですが、元々引越しのトラックは、家財道具を満載状態にして運搬することがありません。1/2から1/3程度空きがある状態で運搬しているのです。
つまり混載便は、『トラックの空きスペースを有効活用するために生まれたサービス』といっても過言ではありません。
『同一方向へ引越しをする他の顧客の家財道具』と一緒に輸送することで、通常料金の半額程度の引っ越し費用で済ませることができます。イメージとしては、『燃料費、高速代、トラック代』をみんなで折半するようなものです。
一方、チャーター便ですが、『トラック』と『ドライバー』のみ用意してもらい、家財道具の搬出、運搬、搬入はすべて自分で行うサービスのことを指しています。
友人や知り合いに引越しの手伝いを依頼する必要があるため、誰でも利用できるサービスではありません。
ただし、一般的な引越しプランよりも格安で引越しをすることができます。引越し業者によっては、『大型家具・家電』の梱包、搬出、運搬、搬入はお任せできることもあるようです。
引越しで混載便を扱っている業者を利用した場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。詳しくみていくことにしましょう。
一番のメリットは、なんといっても安いということです。『同一方向へ引越しをする他の顧客の家財道具』を1台のトラックで一緒に輸送するため、最大で通常料金の半額程度の費用となることもあります。
引越しの作業自体は、通常のサービス内容と変わりありません。あくまでも、輸送方法が通常の引越しとは異なるだけですので、安心してお任せすることができます。
引越しの料金は、トラックのサイズ、輸送距離、作業時間、作業員人数、オプションサービスの有無などでおおよそ決まっています。中でも輸送距離は、割引に限界がある箇所です。
しかし、『同一方向へ引越しをする他の顧客の家財道具』を1台のトラックで一緒に輸送することで、輸送距離で掛るコストを折半することができます。つまり、引越先が離れているほど費用を抑えることができるのです。
混載便は、1台のトラックの中に複数の顧客の荷物を積んで輸送します。宅急便のように、荷物1つずつに対してラベルを貼るなど、細やかな対応がなされているわけではありません。
細心の注意を払っているとはいえ、他の人の荷物と混ざってしまって、荷物が紛失するリスクは付きまといます。
混載便は、トラックが満載になるまで待ってから輸送されます。そのため、出来るだけ早く荷物を届けて欲しい方には不向きなサービスです。
どちらかというと、混載便は荷物量が少ない長距離引越し向けのサービスです。引越し業者によっては、15・3や2・3など、荷物量に制限が設けられていることがあります。そのため、荷物量が多い引越しでは利用できません。
急ぎの引越しには向いていない項でも触れましたが、混載便は荷物の到着までに最大7日から10日程度かかることがあります。そのため、すぐに新生活を始めたい方には不向きです。
混載便は、近距離向けのサービスではありません。最低でも100km程度離れている長距離引越し向けのサービスです。そもそも近距離の場合、混載便にしてもあまり安くはなりません。
それでは次に、引越しでチャーター便を利用した場合の、メリット・デメリットについて解説していくことにしましょう。
チャーター便の最大のメリットは、とにかく安いということです。トラック代、ドライバーの人件費、燃料代、家財道具の輸送代程度しか掛りませんので、どの引越し業者でも格安料金で提供されています。
チャーター便の料金形態は、非常にシンプルな内容となっています。また、余程のことがない限り、当日追加料金が請求されることもないため、安心して利用できるサービスなのです。
ネット上の情報でたまに誤った情報を見掛けますが、チャーター便利用時は『ドライバーのみ』が派遣されます。荷物の搬出、搬入は手伝ってもらえません。
引越し業者によっては、大型家具・家電のみ対応してくれることもありますが、基本的には自分で行います。
そのため、それなりの人手が用意できないときは、利用を控えた方が無難です。
引っ越し作業は、かなり体力を奪われます。また、大型家電や家具の搬出や搬入は、素人が簡単にできるものではありません。そのため、引っ越し作業に慣れていない方は、チャーター便を避けた方が賢明です。
トラックへ家財道具を積み込む際、ドライバーが手伝ってくれるとはいえ、搬出や搬入はすべて自分たちで行います。そのため、荷物に対する補償は一切ついていないことがほとんどです。
人手を確保できたとしても、ほとんどの人が引っ越しのプロではありません。そのため、怪我や荷物の落下などのリスクは非常に高いといえます。
ちなみに、引越しで混載便を利用した場合、怪我や荷物の落下などのリスクは、チャーター便ほどではありません。
それでは次に、混載便とチャーター便の特徴について取り上げながら、料金を比較していくことにしましょう。ただし、その前に2つ抑えておきたいことがあります。
1つ目は、『混載便』のみ扱っている業者が多いということです。そのため、チャーター便を利用したい場合は、事前に問い合わせて確認する必要があります。
2つ目は、ホームページ上で料金を案内しているケースが、ほとんどないということです。ようするに、相場料金はとても比較しづらいのが現状だといえます。
そこで今回は、混載便とチャーター便の特徴について解説し、料金の比較は国土交通省が定めている『標準引越運送約款』を基に解説することにしましょう。
1台のトラックに、複数の顧客の家財道具を積んで輸送するサービスです。トラック代や燃料費、輸送費が折半となるため、長距離引越しの費用を抑えたい方に最適なサービスです。
トラック1台とドラーバー1名のみが派遣されるサービスです。荷造り、搬出、搬入、荷解きを自分で行いたい方に最適なサービスです。
引越し料金は、国土交通省が定めている『標準引越運送約款』を基に、各引越し業者が決めています。上限金額と下限金額が決まっており、規定金額の前後10%以内で各引越業者が料金を選定しているのです。
尚、引越し料金は以下の計算式で算出されています。
2tショートトラックを利用した引越しを例に挙げながら、混載便とチャーター便の料金を比較してみましょう。
基本運賃:トラックのサイズ、作業時間、移動距離によって決まります。
実費:主に人件費のことを指しています。通常、閑散期1名あたり1万円前後です。
付帯サービス:オプションサービスのことを指しています。
例)2tショートトラック / 引越し作業時間4時間以内 / オプションなし / 作業員3名
※『標準引越運送約款』で定められている上限金額を参照
基本運賃:20,330円
実費:ドライバー1名、作業員3名 4万円
付帯サービス:なし
たとえば、3名の顧客が混載便を利用した場合、基本運賃の20,330円が3等分されます。厳密にいうと、荷物量などによって料金が異なる他、引越し業者によっては独自で荷物制限を設けているのが一般的です。
今回の事例では、シンプルに基本運賃を3等分してみましょう。すると、基本運賃は、6,777円となります。(小数点以下切り上げ)
通常の引越し料金で算出した場合、60,330円。混載便を利用した場合、46,777円ですので断然お得です。
基本運賃:20,330円
実費:ドライバー1名 1万円
付帯サービス:なし
チャーター便の場合は、基本運賃とドライバーの人件費のみとなるため30,330円となります。以上のことから、混載便よりもチャーター便の方が安いといえるのです。
混載便とチャーター便について詳しく分かってきたところで、具体的にどのような人にお勧めなのか見ていくことにします。
表にまとめましたので、参考にしてください。
混載便 | チャーター便 |
---|---|
・荷物量が少ない方 | ・荷物量が少ない方 |
・できるだけ引っ越し費用を抑えたい方 | ・体力に自信がある方 |
・荷物量が少ない長距離引越しをする方 | ・人手がたくさんある方 |
・荷物の到着日が数日後でも問題ない方 | ・補償がなくても気にしない方 |
・荷物紛失リスクを理解した上で任せたい方 | ・引っ越し作業に慣れている方 |
・荷造り荷解き以外の作業はお任せしたい方 | ・とにかく引っ越し費用を抑えたい方 |
・引越しのために時間を割くことができる方 |
今回は、ヤマトホームコンビニエンス、アート引越センター、アーク引越センター、アリさんマークの引越社、日本通運、サカイ引越センターの6社をピックアップし、プランやサービスをご紹介しながら、料金に関する情報も分かる範囲で触れていくことにしましょう。
サービス内容:専用BOXでの輸送となります。単身引越サービスのBOXサイズは、『104cm×104cm×130cm 1.40・3』。単身引越サービスminiのBOXサイズは、『104cm×104cm×170cm 1.83・3』です。
料金相場:
単身引越サービス:関東エリア同一市区内BOX1本あたり12,000円(税抜)から
単身引越サービスmini:関東エリア同一市区内BOX1本あたり11,000円(税抜)から
サービス内容:2・3単位の料金設定となっています。600km圏内であれば翌日配送が可能です。また、9時から18時の間で時間指定することができます。
料金相場:
公式ホームページ内で、詳しい案内はありませんでした。料金は、全家財量と輸送距離によって決まります。
公式ホームページ内で、詳しい案内はありませんでした。取り扱いがあるか、確認してください。
サービス内容:プラン名は用意されていないものの、混載便は扱っているようです。Q&Aのページ内で案内されていました。少ない荷物で混載便を利用する場合、お届けは3日後となります。
距離によってお届け日に変動があるため、事前に確認しましょう。
料金相場:
公式ホームページ内で、詳しい案内はありませんでした。事前に問い合わせて確認してください。
公式ホームページ内で、詳しい案内はありませんでした。取り扱いがあるか、事前に確認してください。
アーク引越しセンターの公式ホームページ上では、混載便とチャーター便に関する案内がありませんでした。ただし、『各種引越しプランを用意している』といった案内があったため、見積もり依頼時に確認することをお勧めします。
サービス内容:アリさんマークの引越社では、3つの単身専用引越しプランを提供しています。混載便として案内されているわけではありませんが、それぞれのプランで荷物量に制限が設けられているのです。
つまり、混載便として輸送される可能性が高いといえます。3つのプランの概要は、以下のとおりです。尚、この3つのプランには利用条件があります。
『同一区内、同一市内の5km以内』、『時間指定不可』、『ダンボールサイズは 縦、横、奥行 = 150cm以内』の3つです。
料金相場:
公式ホームページ内で、詳しい案内はありませんでした。事前に問い合わせて確認してください。
公式ホームページ内で、詳しい案内はありませんでした。取り扱いがあるか、確認してください。
サービス内容:専用のBOXに詰めて輸送するプランです。ボックスのサイズは、Sサイズ(横幅108cm、奥行74cm、高さ155cm)、Lサイズ(横幅108cm、奥行104cm、高さ175cm)の2パターンが用意されています。
料金相場:
単身パックS 15,000円(税抜)から
単身パックL 16,000円(税抜)から
サービス内容:単身パックS・Lよりも荷物量が多く、移動距離が150km以上離れた引越し専用のプランです。お届け日は、引き取りの翌日以降となっています。
料金相場:
最安値は、京都府~愛知県の51,000円(税抜)です。最高値は、北海道~福岡県の98,500円(税抜)でした。
サービス内容:一部の地域のみで提供されているプランです。荷台サイズは、高さ2.2m、横1.36m、奥行1.89mで、ドライバーのみ派遣されます。利用を希望する場合は、直接問い合わせて確認してください。
荷物例)冷蔵庫2ドア、洗濯機、シングルベッド(パイプ)ベッド、テレビ、電子レンジ、ベットマット、ふとん袋、カラーボックス2個、ダンボール5個程度
料金相場:
平日:7,000円(税抜)
土日祝日:8,000円(税抜)
サービス内容:荷物量が少ない長距離引越し専用のプランです。荷物の到着日に余裕がある方に適しています。
料金相場:
公式ホームページ内で、詳しい案内はありませんでした。事前に問い合わせて確認してください。
公式ホームページ内で、詳しい案内はありませんでした。取り扱いがあるか、事前に確認してください。
長距離引越しの場合、混載便とチャーター便のどちらがお勧めなのでしょうか。結論から先にいいますと、混載便の方がおすすめです。混載便をおすすめする理由は、以下の3つとなります。是非、参考にしてください。
チャーター便は、万が一の補償が付いていません。しかし、混載便では補償が付いています。そのため、引っ越し中に家財道具が壊れたとしても、規約に沿って補償して貰うことが可能です。
混載便は、1台のトラックに複数の顧客の家財度具を積んで運送するサービスです。つまり、輸送方法以外は、他の引越しサービスと同じ内容となります。
たとえば、荷造りと荷解きは自分で行い、その他の引っ越し作業をすべてお任せするといったことが可能です。
チャーター便の場合、荷造りや荷解きだけではなく、搬出、搬入も自ら行う必要があります。基本的に、派遣されるドライバーが手伝ってくれることはありませんので、人出が無い場合は利用することができません。
混載便は、荷物量に制限が設けられていることがあります。2・3や5・3など単位は引越し業者ごとで異なりますが、荷物量が少ない長距離単身引越しであれば、最も安い料金で引越しができるはずです。
長距離引越しを予定しており、できるだけ費用を安くしたいのであれば、混載便が最も適したサービスであることが分かりました。また、チャーター便は安くなるものの、デメリットの方が多いことから長距離引越しには不向きです。
家財道具到着までにそれなりの日数が掛ったり、時間を指定することができなったり、荷物紛失のリスクが高い点は、認めざるを得ない混載便のデメリットではあります。
しかし、これらのデメリットを把握した上で利用するのであれば、混載便は魅力的なサービスです。
大手の信頼できる引越し業者へ依頼することで、荷物到着までにかかる日数を短くしたり、到着時間を多少調整することは可能ですので、事前によく相談しておくようにしましょう。