オフィスや事務所の引越し(移転)には、一通りの手順が存在します。手順に沿って準備を進めることで、スムーズに引越しをすることができるはずです。
とはいえ、一体何から手をつければ良いのでしょうか。オフィスや事務所移転手順について、詳しく解説していくことにしましょう。
オフィスや事務所の移転手順から、詳しくみていくことにします。事業の規模などによってお話は異なってきますが、基本的に6ヶ月ほどの準備期間が必要です。
『現オフィス・事務所からの退去スケジュール』、『新オフィス・事務所への移転スケジュール』を以下の図にまとめてみました。更に、詳細についても補足しましたので、参考にしてください。
6ヶ月前 | オーナーもしくは賃貸業者への解約予告 移転計画の作成 保証金返還時期確認 原状回復条件確認 |
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5ヶ月前 | |
4ヶ月前 | 原状回復の見積もり依頼 |
3ヶ月前 | 社内打ち合わせと移転説明 |
2ヶ月前 | |
1ヶ月前 | 官公庁への届け出 |
移転月 | 引き渡し 原状回復工事 |
契約書に記載されている、解約予告について確認しましょう。ほとんどの場合、3ヵ月から6ヶ月前までに解約予告をすることになっています。解約予告日を過ぎてしまうと、余計な出費が発生することになるため、早めに対応しましょう。
いつまでに何を行うべきか、スケジュールを立てます。やり方が分からない場合は、事務所移転専門業者に頼ると話がスムーズになるはずです。スケジューリング程度であれば、無料で対応している業者が大半となっています。
いくつかの業者へ依頼し、ベストなスケジュールを選択しましょう。
満期で退去する場合、旧事務所やオフィスの契約満了に伴って、『保証金』が返還されます。返還されるタイミングは契約内容によって様々です。
ほとんどの場合、原状回復工事が完了してから返還されることになります。返還タイミングは曖昧にせず、必ず確認しておきましょう。
事務所やオフィスの劣化は、どうしても避けることができないものです。とはいえ、新築
同様の状態に戻す必要はありません。どこまで原状回復工事を行えば良いのか、物件のオーナーや不動産管理会社へ確認しましょう。
原状回復工事は、坪単価で判断されることがほとんどです。軽視して移転ギリギリになってから話を進めようとすると、多額の費用を請求される可能性があります。そのため、早めに見積もり依頼をし、費用を算出しておきましょう。
事業規模や従業員の人数によっても対応は分かれますが、社内で緊密な連携を図る必要があります。そのため、移転組織を編成したり、移転作業担当者を選出するなどして、社内での打ち合わせを行いましょう。
また、従業員の人数に関係なく、移転説明会を開くことをお勧めします。そうすることで、事務所移転までのスケジュールや作業内容、日常業務のペース配分などが一目瞭然となります。
尚、事務所やオフィスの移転は、一般家庭の引越し以上に『荷造り』が重要です。『どのダンボールに何が入っているのか』、『どこへ運ばなければならない荷物なのか』など、分かりやすくラベリングをする必要があります。
それぞれの自己判断でラベリングすると、業務に支障をきたしてしまうため、事前に周知して統一するようにしましょう。ちなみに、社内で共有できる『オフィス引越しマニュアル』を作成すると大変便利です。
法務局、税務局へ移転届を提出します。詳細は、次項で詳しく解説しますので、そちらを確認してください。
旧オフィス・事務所の引き渡しを行います。事前にオーナー、不動産管理会社と打ち合わせをしておきましょう。
全ての荷物の搬出が完了してから、原状回復工事に着手します。オーナーの意向やビル側の都合で、予め業者が指定されていることもあります。もしも自ら手配する必要がある場合は、移転作業を依頼した業者にお任せした方が無難です。
万が一、移転作業を依頼した業者で対応できない場合でも、提携先の業者を紹介して貰うことができます。
6ヶ月前 | 移転先選定 |
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5ヶ月前 | 移転コスト算出 新しい事務所・オフィスの賃貸契約 |
4ヶ月前 | 引越し日決定 オフィスレイアウト作成 |
3ヶ月前 | 業者選定 発注作業 |
2ヶ月前 | 引越し準備 |
1ヶ月前 | 官公庁への届け出 電話・ネット関連会社への届け出 移転の案内状や通知送付 |
移転月 | 新事務所・オフィスでの片付け |
移転先を選定する際は、下見が欠かせません。仕事をしながら準備を進めることは大変な労力を伴いますが、必ず現地まで足を運ぶことをお勧めします。また、移転する運びとなった『移転目的』を明確化することも重要です。
たとえば、『従業員の人数が増えた』ことで移転する場合、『どの程度の広さが必要なのか』、『仕事をしやすいフロアの作りになっているか』、『旧事務所やオフィスにはなかった便利な空間の使い方はできるのか』などといった見方が移転先選定でポイントとなります。
他にも、設備、立地、コストなど、いくつか条件があるため、慎重に選定したいものです。尚、『現オフィス・事務所からの退去スケジュール』の項で取り上げた、『移転計画』に沿って移転先を選定することをお勧めします。
『立地、設備、コスト』などの条件を明確化させた上で、トータルの移転コストを算出します。特に、廃棄処分する什器や、新事務所・オフィスで使用する什器は、多額の費用がかかるものです。
旧・新事務所、オフィスで掛る費用は、『どこへどの程度費用を掛けるのか』、『新事務所やオフィスをどのような空間にしたいのか』によって大きく異なってきます。いくつかの業者へ見積もりを依頼し、移転コストを明確化させましょう。
移転先の現地調査を行った上で、候補のビルを比較検討し、最終的には契約する運びとなります。入居申込書や預託金の支払いなど、対応に追われることになるため、契約手順は事前にしっかりと確認しておきましょう。
事務所やオフィスの移転(引越し)の荷造りは、一般家庭の荷造りよりも相当の時間と手間が掛ります。そのため、移転日は早めに決定しましょう。
事務所移転実績が豊富で、コストパフォーマンスが高い業者へ依頼しましょう。また、営業担当者の人柄も重要です。『親身になって対応してもらえるか』、『迅速な対応が可能か』といった点もチェックすることをお勧めします。
新しい事務所やオフィスが決まった時点で、移転先のレイアウト作成を行います。最近は、無料でレイアウト作成を依頼できるケースが増えてきましたので、移転作業を依頼する業者へ相談してみましょう。
『内装、電話・通信関連、什器関連』などは、自ら専門業者へ依頼して、契約を結ばなければならないケースがあります。事務所やオフィスの移転を専門で扱っている業者が、ある程度手配してくれるケースはあるものの、その時々で話が異なってくるのが現状です。
そのため、事務所移転専門業者と打ち合わせをする中で、別途、専門業者との契約が必要となるか確認しておきましょう。
本格的に荷造りや片付けを始めます。中でも、ダンボールへのラベリング方法は、社内で統一するようにしましょう。代表的なラベリング方法は、以下の3つです。
・荷物の行き先(部署、フロア)ごとに色分けをする
・荷物の中身、担当者の名前(個人の荷物は個人名も)を記載する
・ラベルはダンボールの側面2箇所、ダンボールの蓋1箇所に貼るのが理想
尚、同じラベルのダンボールや荷物同士をまとめて置くようにすると、搬出や搬入の作業がスムーズになります。また、作業漏れがないように『オフィス引越しチェックリスト』を共有しておくと便利です。
法務局、税務局へ移転届を提出します。詳細は、次項で詳しく解説しますので、そちらを確認してください。
工事の手続きだけ進めて、一番重要となる契約関連の手続きを忘れてしまうことがあります。2ヶ月前あたりから対応可能ですので、早めに手続きを済ませてしまいましょう。
取引先へ送付する案内状や、顧客向けに送付する通知を用意します。また、名刺や封筒など、旧住所が記載されている物品に関しても、早いタイミングで新しい住所へ変更しておきましょう。
無事に移転作業が完了したら、あとは荷解きをして片づけを進めるだけとなります。
事務所やオフィスの移転手順、スケジュールが分かったところで、次は事務所移転時に必要となる手続き、届出関連についてみていくことにしましょう。順を追って解説しますので、参考にしてください。
本店(本社)が移転となる場合、法務局へ変更届けを提出しなければなりません。ただし、どこへ移転したのかによって、必要となる書類や登録免許税の金額が異なります。詳細は、移転前の法務局担当部署へ確認してください。
手続きは、約1週間程度で完了します。移転後2週間以内までに手続きを行いましょう。主な必要書類としては、登記簿謄本、定款、印鑑証明書などがあります。
移転前、移転後の管轄税務署へ異動届を提出します。手続きのタイミングは、移転後で構いません。国税庁のホームページから、提出書類をダウンロードして、必要事項を記載してください。尚、提出時は、移転登記後の法人登記簿謄本が必須となります。
他にも、給与支払い事務移転の届け出(旧・新1ヶ月以内)などが必要です。併せて事前に確認してください。
地方税事務所にも、住所変更の報告を行わなければなりません。異動届出書の提出先は、地方によって異なります。管轄の地方税事務所へ確認してください。
健康保険、年金を管轄している年金事務所に対し、住所変更手続きを行わなければなりません。移転後5日以内までに、移転前の管轄年金事務所にて手続きを行います。
登記簿謄本を添付した上で、健康保険厚生年金保険適用事業所所在地・名称変更(訂正)届を提出してください。また、建物の賃貸借契約書の写しが必要となることもあります。
労災保険の関係上、移転後の管轄労働基準監督署に所在地等変更届を提出します。商業登記簿謄本、賃貸借契約書のコピーの提出が求められることもあるようです。事前に問い合わせをしておきましょう。尚、届出期間は、移転後10日以内です。
雇用保険の関係上、移転後の管轄職業安定所に雇用保険事業所変更届を提出します。移転後10日後までに手続きを終えておきましょう。
電話移転手続きには、登記簿謄本(抄本)が必要となります。利用中の電話局へ連絡をし、移転する旨を伝えましょう。遅くとも、移転日から数えて1ヶ月前までには手続きを開始しておきたいものです。その際、次の3点を確認しておきます。
・電話番号変更有無
移転先によっては、電話番号が変更となるケースがあります。事前に確認をしておきましょう。
・移転案内サービス
電話番号が変更となる場合、変更後6ヶ月間は無料で番号変更案内を流してもらうことができます。必要に応じて、手続き時に申込みをしておきましょう。
・電話工事(配線・設置)詳細確認
配線や設置工事の詳細、費用、リースの場合は契約内容変更、必要手続きについて確認します。
移転前の受持ち郵便局へ、郵便物届出変更届を提出します。手続きには最大1週間程度かかるため、早めに手続きを終えておきましょう。
オフィスや事務所の引越し手順は、前項で解説してきた通りです。しかし、実際に移転(引越し)準備を始めてみると分かりますが、事前に『オフィス移転チェックリスト』を用意しておかないと、移転準備が滞りがちとなります。
また、『オフィス移転チェックリスト』があると、どこまで準備が進んでいるのか一目瞭然となり、社内で情報共有しやすくなるものです。とはいえ、『オフィス移転チェックリスト』は、どのように作成したら良いのでしょうか。
東京都に拠点を置く『株式会社永福引越センター』、オフィス移転専門業者『三幸ファシリティーズ株式会社』の公式ホームページでは、『オフィス移転チェックリスト』を無料で配布しています。
ネットでリサーチしてみると、たくさんのリストが見つかりますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。ただし、企業ごとでリストの内容は若干異なります。そのため、移転作業を依頼する専門業者の営業マンへ、リスト作成を依頼してみるのも一考です。
ベストな移転チェックリストが入手できるだけではなく、必要な項目を社内で打ち合わせて追加したり、不要な項目を省く手間が省けます。
ここまで事務所・オフィスの引越しについて詳しく解説をしてきましたが、つまるところ何から手をつければ良いのでしょうか。結論からいいますと、『移転スケジュールの作成』から着手しましょう。
なぜ、『移転スケジュールの作成』が重要なのでしょうか。それは、スケジュールが決まらなければ、いつまでに何を行えばよいか予定を立てることができないからです。
一般家庭の引越しとは大きく異なり、事務所やオフィスの引越しは、莫大な費用と時間が掛ります。従業員の人数にもよりますが、綿密な計画と準備がなによりも重要となるのです。
移転時にトラブルが発生してしまうと、顧客・従業員はもちろんのこと、取引先の企業に損害を与えることも十分考えられます。そのため、どんなに遅くとも6ヶ月前を目処に、移転スケジュールの作成から着手するようにしましょう。
スケジュールの立て方が分からない場合は、事務所やオフィスの移転を専門に扱っている企業に相談することをお勧めします。
相談は無料であるケースがほとんどですので、2社から3社程度に相談しながらスケジュールを作成してください。
それでは最後に、事務所・オフィス引越しの注意点、確認ポイントについて取り上げていきます。事務所・オフィス引越しは、頻繁に行うものではありません。
そのため、ついつい業者任せとなりがちです。以下の3つの注意点は、最低限抑えるようにしましょう。
事務所・オフィスの移転に伴って、『変更すること』と『変更しないこと』を明確化します。たとえばデスクや椅子など、今まで使用していた什器を継続的に使用するか、業務の効率化を図るために、隣接する部署の配置を変更するかなど様々です。
一度、社員一人ひとりの意見を集めてみても良いかもしれません。環境が変わることをきっかけに、業務の効率化やモチベーションアップを図ることができるよう工夫してみましょう。
移転スケジュールを立てて、その通りに話を進めていたとしても、大なり小なりアクシデントに見舞われることがあります。
また、移転の話がどこまで進んでいるのか、社内で情報を共有しておかないと、認識の相違が生まれて人間関係のトラブルに発展することも珍しくありません。そのため、情報の共有と報告はこまめに行うようにしましょう。
移転の打ち合わせ時、もしくは移転に伴う話が進んでくると、業者側から様々な提案があります。その際、ついつい業者のいいなりになりがちですが、必ず『提案するに至った根拠』を確認しましょう。
その根拠が『移転の目的』と合致しており、提案を取り入れた方が良いと判断される場合のみ、提案を受けることをお勧めします。なぜなら、業者側の利益目的や都合で、もっともらしい理由を持ち出して提案されることがあるからです。
今回は、オフィスや事務所の引越し(移転)の準備・手順について解説しました。準備期間を含めると、6ヶ月から1年単位で対応しなければならないため、考えただけでもぐったりとしてしまうかもしれません。
しかし、スケジュールを立てた上で、やるべきことを1つずつこなしていけば、トラブルに見舞われることなく、無事引越し(移転)を終えることは十分に可能です。
従業員同士が一丸となって準備を進めるだけではなく、信頼できる業者と連携を取りながら、オフィスや事務所の引越し(移転)の話を進めてみてはいかがでしょうか。